赤ちゃんの腕とちぎりパンのように、世の中には似て非なるものがたくさんあります。
税金の世界でも似て非なるものがあふれていますのが、今日は所得税の中の似て非なるものを紹介します。
目次
収入と所得
税金の世界に身を置く人間からすると、この違いは明らかなのですが、一般の人から見ると混同しやすいものです。
収入は言い換えると「売上高」、所得は言い換えると「利益・もうけ」です。
収入 ー 経費 ー 所得控除 = 所得
年末調整あるあるですが、扶養控除等申告書に書く被扶養者の見積所得額欄に収入金額を書いてしまうというものが代表的ですね。
配偶者の年収が103万円の場合、ここで103万円と書いてしまうと配偶者控除の適用は受けられません。
この場合は、収入103万円から給与所得控除額の65万円を差し引いた38万円が正解です。
事務所勤務時代にも、「これ間違って収入金額を書いてるよなぁ」と思いつつも、念のため収入か所得かをお客さんに確認するということがよくありました。
課税標準の合計額と合計所得金額
課税標準の合計額と合計所得金額のどちらも所得控除をする前の所得の金額ですが、同じ金額になることも多いですが、違いは次のとおりです。
課税標準の合計額・・・前年度以前から繰り越した損失の繰越控除後の金額
合計所得金額・・・・・前年度以前から繰り越した損失の繰越控除前の金額
この違いの影響が出てくるのが所得控除の計算や判定です。
課税標準の合計額・・・医療費控除などの物的控除の判定で使用
合計所得金額・・・・・配偶者控除などの人的控除の判定で使用
例えば、「医療費が10万円以上ないと医療費控除を受けられないよ」という話で出てくる、医療費控除の足切り額の10万円も、厳密には「課税標準の合計額の5%と10万円のどちらか少ない方」というのが正しく、課税標準の合計額が200万円未満の場合には医療費が10万円未満でも医療費控除を受けられます。
また、合計所得金額については、配偶者の収入がパートなどの給与収入のみであれば問題ないですが、次のような場合は配偶者控除の適用が受けられなくなります。
【配偶者がパートの傍ら株式の売買をしているパターン】
配偶者の給与収入103万円
特定口座での株式の譲渡益100万円
前年からの株式売買のから生じた繰越損失100万円
この場合、配偶者が株式の譲渡益を申告不要にすれば、合計所得金額は「103万円ー65万円=38万円≦38万円」となるので夫側で配偶者控除が使えます。
しかし、前年の繰越損失を使って、今年の譲渡益から徴収された源泉所得税を取り戻そうとすると合計所得金額は「(103万円ー65万円)+100万円=138万円>38万円」となるため、夫側で配偶者控除を使うことができません。
ただ、配偶者控除を使えないから損したとは限りません。
夫が配偶者控除を受けて減る税額よりも、配偶者が前年からの繰越損失を使って取り戻した源泉所得税の方が多い場合は、株式の譲渡益を申告いた方が有利になります。
そのほか合計所得金額は、住宅ローン控除の適用ができるかどうかの判定でも使います(合計所得金額が3,000万円を超える場合は住宅ローン控除が適用されません)。
出産一時金と出産手当金
出産時にもらえるお金として、出産一時金と出産手当金があります。
これも、名前が似ていますが税金の計算では扱いが違います。
出産一時金・・・出産したら健康保険から給付を受ける一時金
出産手当金・・・産休により休んだ期間の給与を補てんする手当
出産一時金は働いている人も働いていない人ももらえますが、出産手当金は働いている人で会社の社会保険に加入している人が対象です。
出産一時金・・・医療費控除の対象となる出産費から控除する
出産手当金・・・所得税・住民税は非課税
税務上は、出産一時金は医療費を補てんする保険金等とされますが、出産手当金は傷病手当金と同じく妊娠・出産により働けなかった期間の所得補償的な性格から上記のような取扱いになっています。
おわりに
紛らわしく間違えやすいものをピックアップしましたが、他にも考えていたネタがありますので機会があれば記事にします。
◆編集後記◆
前の事務所のスタッフさんが、このブログを楽しみにしているとか。
ひとりでもそういう方がいるとブログ更新の励みになりますね。
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山端一弥
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