国庫補助金等をもらって固定資産を取得した場合や、保険金をもらって固定資産を取得した場合に使える制度として、圧縮記帳の制度があります。
この制度と一緒に少額減価償却資産の特例が併用できますので、忘れずに適用を受けましょう。
目次
制度の内容
圧縮記帳
国庫補助金等や保険金等をもらって固定資産を購入する場合、このままだと補助金や保険金をもらったときに、補助金や保険金に法人税や所得税が課税されてしまいます。
それでは補助金の効果や、保険金で被害を受けた固定資産の代わりの資産を購入することを阻害してしまうため、補助金や保険金を取得価額から差し引いて、差し引き後の取得価額をベースに減価償却を行うことにより、毎期の減価償却費の計上を少なくして、将来に課税を繰り延べる制度が圧縮記帳制度です。
少額減価償却資産の特例
青色申告法人である中小企業者等が、取得価額が30万円未満の固定資産を取得した場合には、一事業年度または年間の合計額が300万円を限度として、一度に全額を税法上の経費とすることができる制度が、少額減価償却資産の特例制度です。
圧縮記帳と少額減価償却資産の特例の併用
圧縮記帳制度では、1円以上の備忘価額を帳簿に残さないといけないようになっています。
少額減価償却資産の特例は、取得価額が30万円未満の場合に使える特例ですが、この取得価額とは補助金や保険金を差し引く前の取得価額ではなく、差し引き後の取得価額で判断します。
法人税法施行令第54条3
第1項各号に掲げる減価償却資産につき法第42条から第50条まで(圧縮記帳)の規定により各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該各号に掲げる金額から当該損金の額に算入された金額(法第44条の規定の適用があつた減価償却資産につき既にその償却費として各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該金額の累積額に第82条(特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮限度額)に規定する割合を乗じて計算した金額を加算した金額)を控除した金額に相当する金額をもつて当該資産の同項の規定による取得価額とみなす。
ですので、”もらった補助金や保険金” ≧ ”固定資産の取得価額”の場合は、1円の帳簿価額しか残らないので、これらの制度の併用はあまり意味がないのですが、”もらった補助金や保険金” < ”固定資産の取得価額”で差額が30万円未満の場合は、これらの制度の併用が効果を発揮します。
なお、この圧縮記帳制度と少額減価償却資産の特例の併用は、国庫補助金等の圧縮記帳、保険差益の圧縮記帳や交換差益の圧縮記帳などの法人税法上の圧縮記帳に限られています。
買換え資産の圧縮記帳などの租税特別措置法(以下「措置法」)上の圧縮記帳と少額減価償却資産の特例は併用できません。
これは少額減価償却資産の特例は措置法の規定であるためで、税法では、措置法のダブル適用は認められていないからです。
まとめ
圧縮記帳は税理士試験の勉強ではさんざんやりましたが、私の場合、今までは実務で使うことは少なかったですし、今後もそんなにないかもしれません。
ですので、私と同様に実務で使う機会が少ないと、圧縮記帳をしたことで安心してしまい、併用できる少額減価償却資産の特例を適用し忘れる可能性があるので注意が必要です。
措置法のダブル適用はできないというのは、税理士受験時代に聞いていたことがあったのですが、今回の記事を書くに当たり調べていて久々に思い出しました。
もうすぐ税理士試験ですが、こういうところが出たりするかもしれません。
私も受験生時代は、実務問答集を見て、試験に出題しやすそうなところはチェックしていました。
◆編集後記◆
午後から研修の予定があるため、午前中にブログを書き上げなければというプレッシャーがあったので、今回は短い時間で記事を書くことができました。
やはり、時間を制限するというのは大事ですね。
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山端一弥
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