設備投資をした場合に適用を受けられる特例制度として、特別償却と税額控除があります。
どちらを選択した方が有利でしょうか?
一般的には減価償却の前倒しである特別償却よりも、払うべき税金が減る税額控除の方が有利ですが、視点を変えると特別償却を選択する余地もあります。
目次
特別償却と税額控除の比較
”取得価額×一定の割合”をその取得して使用開始した事業年度の費用にできる制度
”取得価額×一定の割合”をその取得して使用開始した事業年度の税額から控除できる制度
特別償却も税額控除も取得価額に一定の割合をかけて特別償却額と税額控除額を計算しますが、この割合は適用を受けられる制度によって変わってきます。
例えば、中小企業投資促進税制では特別償却は30%を、税額控除は7%を取得価額に乗じますすし、
生産性向上設備投資促進税制では、平成28年3月31日までに取得して使用すれば、取得価額全額を使用開始した事業年度の費用にすることができます(税額控除は5%)。
※生産性向上設備投資促進税制は、平成28年4月1日〜平成29年3月31日までに取得して使用開始する場合、特別償却は最大50%、税額控除は最大4%となります。
国税庁HP 生産性向上設備投資促進税制
有利・不利の判断
一般的に、特別償却は減価償却費の前倒し計上であって、当期の税金は減りますが、今払うべき税金を将来に先送りしているに過ぎません。
一方、税額控除はシンプルに払うべき税金が減るだけで、その減った分は将来に払う必要もありませんので、税額控除の分だけおトクです。
これだけみれば、税額控除の方が有利ですし、私の経験上、実務でも税額控除を選択する方が多いです。
ただし、資金繰りという視点で考えると、特別償却を選択する余地も出てきます。
100万円や200万円ぐらいの固定資産を買った場合などは、特別償却を選択して当期の税額を減らしても、資金繰りがラクになるほどの効果はありません。
しかし、何千万円や何億円単位の設備投資の場合には、資金繰りに対する影響は大きくなります。
例えば、1億円の生産性向上設備を取得した場合、税率を30%とすると次のようになります(わかりやすくするために普通償却費は無視しています)。
【特別償却の場合】
1億円×100%×30%=3,000万円納税額が減少
【税額控除の場合】
1億円×5%=500万円納税額が減少
【差額】
3,000万円ー500万円=2,500万円 → この分だけ手許に残るお金が増える
もし、当期の利益が少ない場合でも繰越欠損金として最大10年間は繰り越せますから、向こう何年間の納税額を考えないで済む可能性もあります(税額控除も繰越しができますが1年間のみです)。
まとめ
資金が豊富にある、納税資金を金融機関から借りられる、こういう場合には税額控除を選択すべきでしょうが、資金繰りが苦しい場合は特別償却を選択することも視野に入れましょう。
われわれ税理士も有利不利を判断しますが、最終的に決定するのは納税者の方なので、その選択を誤らせないような情報提供と事前説明をするとともに、確認を取っておく必要がありますね。
税金を減らすだけが税理士の仕事ではないと感じます。
◆編集後記◆
昨晩、約2年ぶりぐらいにジョギングをしました。
頭で思っているイメージ通りに走れないことにガックリきましたが、
”走り込んだら元に戻る”と自分に言い聞かせました(^^;
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山端一弥
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